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2022.12.11

朝倉はかつて日本の首都だった?斉明天皇の橘広庭宮はどこに…

極東アジアの動乱危機に、朝倉に朝廷を移した大和政権。ここ朝倉の地に造営された宮の謎に迫る。

百済救援軍の拠点、朝倉

時は西暦660年7月、唐と新羅の連合軍は百済を滅ぼした。同年10月、百済の使者が救援要請のため来日し、要請を受けた女帝である斉明天皇は息子たち中大兄皇子(のちの天智天皇)と大海人皇子(のちの天武天皇)を引き連れ救援軍を率いて西征する。661年5月、筑紫・朝倉の地に宮として造営されたのが「朝倉橘広庭宮(あさくらのたちばなのひろにわのみや)」であった。しかし、斉明天皇は志果たせず、滞在、わずか2ヶ月余り、病のために68歳で崩御された。
10世紀半ばに編纂された『和名類聚抄』には朝倉のことを「上座・下座」と記しており、座の一文字で安佐久良と読ませている。また「座」は天皇の玉座という意味も含み、橘は、永続性、繁栄を意味する吉祥の語句である。「広庭」は広大な筑紫平野を庭に見立てたとも言える。そして「庭」は朝廷の「廷」と意味を同じくする。確かに朝倉の地にかつて朝廷としての都があったことを意味している。しかしながら、朝倉のどこに宮が造営されていたのか、複数の説があるとおり今もって謎なのである。

所在地 須川説

1694年発行の古賀仁右衛門著『朝倉紀聞』では旧朝倉町須川(長安寺地区)を宮跡としており、貝原益軒著『筑前国続風土記』でも「朝倉橘広庭宮址長安寺大行事社の神山下にあり」と記される。昭和以降も須川説を主張する作家が現れた。さらに発掘調査もたびたび行われ、このうち近年実施された朝倉町教育委員会の調査では「大寺」と書かれた墨書土器が検出され、9世紀ごろには寺のような役割を持つものがあったことがわかった。しかし、それよりも古い宮跡に該当するような遺構は発見されず、長安寺地区に宮跡の可能性は低いとされている。

朝闇神社

所在地 山田説

旧朝倉町山田にある恵蘇八幡宮本殿裏には斉明天皇の遺体を仮安置したとされる前方後円墳が残っている。また『新古今和歌集』には天智天皇の作として「朝倉や木の丸殿に我をれば名乗りをしつつ行くは誰が子ぞ」という有名な和歌が残っている。実際に恵蘇八幡宮近くには木の丸殿と呼ばれる伝承地があり、木の丸殿を舞台にした能『綾鼓』においても、この木の丸殿を「朝倉橘広庭宮」として上演されていた。しかし、この前方後円墳は古墳時代(5世紀ごろ)の造営であるため、時代があわないことがわかっている。

恵蘇八幡宮

所在地 志波説

大分自動車道建設に伴う発掘調査の結果、旧杷木町志波(しわ)に所在する杷木宮原遺跡、志波桑ノ本遺跡、志波岡本遺跡、旧朝倉町大迫遺跡において大規模で規則性のある建物群が検出された。いずれもその土中から7世紀中期から後半にかけての土器が検出され、建物跡も調査の結果、大規模で計画的な建物が簡略な作りで建てられたことがわかった。建物の存続期間が短いことから、朝鮮半島と日本の軍事的緊張関係のなかで逼迫した状況下で建てられており、朝倉宮関連の施設の可能性が高い。なお志波には「宮原」「宮下」「政所」「落(洛)中」「出殿超」「殿築」など宮関連の地名が存在し、旧筑後川対岸には「橘田(たちばんた)」の地名が残っている。旧筑後川の流れは橘田を取り込む形で流れていたとみられ、そこまで含めて朝倉宮だったと考えられる。

志波小学校周辺

朝倉橘広庭宮のロマンを楽しみながら‥‥

斉明天皇が率いた百済救援軍は、その後、救援のため出港し、663年白村江の戦いで唐・新羅連合軍に敗れた。日本は唐・新羅による進攻を恐れて、国防強化を図って水城を築いていく。
「朝倉橘広庭宮」の存続期間はわずかであったが、九州北部はその後も、大陸に備える最前線の拠点であり続けた。
いつかは、宮のあった場所も特定されるだろうが、古代のロマンを感じながら気長に楽しもうではないか。

【参考】甘木歴史資料館 副館長小田和利「甘木歴史資料館展示解説シートNo.3」

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コメント

先日はありがとうございました。
これからまた、よろしくお願いします。
  • 2024.04.09 16:52
  • 冨田栄一
先日はありがとうございます。コミュニティページの活用を図っていきたいと思います。他SNSとの連携やgoogleサーチコンソールへの対応が必要かと思います。
與田さん、ありがとうございます。
おかげさまで、ここまでくることができました。
これからがある意味はじまりですので、
ご意見など、よろしくお願い致します。

  冨田栄一
  • 2023.01.24 14:27
  • 冨田栄一
與田さん、ありがとうございます。
おかげさまで、ここまでくることができました。
これからがある意味はじまりですので、
ご意見など、よろしくお願い致します。

  冨田栄一
  • 2023.01.24 14:26
  • 冨田栄一
HAMONISTオープンおめでとうございます。悠久の歴史を語る仲間の輪が広がることを祈念いたします。
  • 2023.01.19 11:10
  • 與田貴之

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