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2024.06.28

【あさくら地名ものがたり】千代島長者の伝説

筑後川

地名が語る伝説・いにしえの物語

日本各地の地名には、さまざまな由来がある。なぜその地域がそう呼ばれるようになったのか探ると、そのコミュニティの中心となっていた神社の由緒にたどり着いたり、歴史や産業、文化にルーツが垣間見えることも。そんな地名にまつわる伝説・伝承や民話を取り上げるのが【あさくら地名ものがたり】。今回は、杷木志波の地名にまつわる数々の伝説の中から、千代島長者の物語を取り上げる。

千代島長者・斯波時勝の伝説

その昔、斯波時勝という武士がいた。時勝が眠っていると枕元に髪を濡らした美しい女が座っていたという。何者か尋ねると、女は自分が「高山渕に住む大蛇の化身」だと言う。

長年大きな渕に住んでいたが、近ごろ自分よりも大きな大蛇が小さな渕に住み始めた。ところが新しくやって来た大蛇の体は大きく、小さな渕では住みづらいため、大きな渕を狙って女(大蛇)を追い出そうとする。さらには殺そうとまでしてきて、ほとほと困っているそうだ。

志波の渕
北野天満宮

千代島の地名が残る久留米市北野エリアでは北野天満宮が有名

「勇敢なあなた様に、あの小さな渕に住む大蛇を退治していただきたいのです」と女。「もし、救ってくれたら、あなた様を千万長者にして差し上げます」。

女を不憫に思った時勝は大きな渕に住む大蛇(女)を悩ませる小さな渕の大蛇を退治。女の言う通り、時勝は大金持ちに。千代島に住んでいたため「千代島長者」と呼ばれるようになった。普門院にお参りに出かけた時にはぬかるんだ道に金を敷いて飛び石がわりに使ったと言われるほどの豪勢な生活を送ったという。

ところがある日、時勝が川に船を浮かべて河遊びをしていたところ、雷鳴が響き大雨に。雷の轟きとともに「私はお前に殺された大蛇だ」という声がする。時勝の一行が乗る船はたちまち激流に飲まれ、河辺にたち並んでいた土蔵も何もかもがあっという間に流されてしまったという。

千代島は現在の久留米市に今も残る地名。また、「斯波」時勝の名前は、原鶴温泉のある朝倉市杷木「志波」の地名の由来のひとつとされている。

原鶴温泉

日々の暮らしに隠れる物語

筑後川日常

平安時代中期の「延喜式」には、すでに登場している杷木の地名。数々の遺跡や神籠石など、歴史的にも重要なさまざまな発見があるエリアである。斯波時勝の千代島長者伝説は、史実か否か明らかでないが、地域の人びとが日常を送る場所にそんな伝説が隠れていることを知ると、日々の景色にも少し違った味わいが生まれそうだ。

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