2024.07.17
まちの中に響く威勢の良いかけ声。たくさんの視線が注がれる中、走り抜ける巨大な山笠。2024年7月15日、甘木の須賀神社から、祇園祭のフィナーレを飾る追い山が市内を駆け抜けた。今年は5年ぶりに飾り山が公開され、甘木のまちに人々が集う喜びを改めて感じた。
祇園祭といえば京都が有名だが、全国の祇園神社や八坂神社、素盞嗚神社、須賀神社などで夏に開かれる祭りで、ここ朝倉でも甘木と久喜宮の須賀神社で開催される。これら神社のご祭神はスサノオノミコト(素戔嗚尊)、日本の最高神・天照大神の弟である。スサノオはヤマタノオロチ退治の伝説などでよく知られる荒ぶる神だ。
明治時代の「神仏分離」以前の「神仏習合」時、スサノオと同体とされた牛頭天王(ゴズテンノウ)が祇園精舎の守護神であったことから、行疫神である牛頭天王を祀り味方につけることで災厄から身を守る信仰を「祇園信仰」と言い、スサノオ(=牛頭天王)の祭りを祇園祭と称したのである。
一方、山笠と言えば福岡市・櫛田神社の博多祇園山笠が全国的に有名。一説には鎌倉時代に承天寺の開祖である聖一国師・円爾が、悪疫退散のため棒をつけた施餓鬼棚に乗って水を撒いて回ったことが起源と言われている。
博多の山笠が鎌倉時代に生まれたのに対し、朝倉の山笠は甘木の須賀神社は慶長〜江戸時代初期、久喜宮の須賀神社は元禄時代の1695年に初めて山笠が作られたという記録がある。
約300年の歴史を持つ甘木(須賀神社)の祇園山笠は、疫病から身を守るため神輿に御神体を遷して町中をねり回したのが始まりと言われている。毎年7月1日にお汐井どり、13日に子ども樽神輿、15日に追い山が引きまわる。今年は飾り山が公開された。
詳細不明ではあるが、京都の八坂神社から勧請されたとの説もある久喜宮の祇園様(須賀神社)。獅子を先頭に、神輿、山笠の順で地域を練り歩く珍しい形態。2024年は神事のみが開催される予定だ。
京都で平安時代に始まり、1000年以上の時を経た今も、京都から遠く離れた朝倉の地で受け継がれている祇園祭。新型コロナウイルスの流行による災禍が記憶に新しいが、疫病や災厄から身を守りたいという人々の願いは変わらないと言えよう。地域の人々が集まり力を合わせてつなぐ伝統の祭りの景色を、須賀神社の神はしずかに見守ってくださっているに違いない。
甘木 須賀神社の祇園山笠(2022年)アサクラノートYoutubeチャンネルより
朝倉市ホームページ 旬の朝倉(イベント情報)祇園山笠
ふくおか民族芸能ライブラリー「博多祇園山笠行事」
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