2024.07.26
水無月の夏越の祓する人は千歳の命延ぶと云うなり
これは、夏越大祓で茅の輪をくぐる時に唱えることばのひとつ。1年の半分あたりの旧暦6月末(現在の7月末)に茅の輪をくぐって、人々の無病息災を祈ります。暑い夏を乗り切り「寿命が千年にも延びる」ほどの健康を願う夏越祭が、今年も7月31日(水)に甘木の須賀神社(祇園社)で行われます。
茅の輪くぐりにはもうひとつ「蘇民将来、蘇民将来」という唱えことばがあります。祇園山笠の記事で取り上げた通り、須賀神社のご祭神はスサノオノミコト(素戔嗚尊)であり、神仏習合の時代に同体とされた、祇園精舎の守護神・牛頭天王。蘇民将来とは、「備後国風土記」に登場する人物です。もうひとつの唱えことばは、この牛頭天王と蘇民将来にまつわるエピソードが関係しているそう。
昔、祇園精舎の守護神・牛頭天王は、お妃探しの旅に出ていました。途中、泊まるところに困っていると、貧しいながらも心優しい蘇民将来が「汚いところですが」と牛頭天王に栗のご飯をもてなし、親切に泊めてくれました。牛頭天王はその大歓待に感激し、蘇民に「茅の輪」を授け、子孫代々の無病安全と長寿の加護を誓います。これが民の信仰となり日本に伝わったということです。茅の輪くぐりの唱えことばには、蘇民将来の親切な心と、疫病を祓う神である「祇園さま」、つまり牛頭天王・スサノオノミコトの物語が深く関わっていたのです。
「輪ごし」とも言われる須賀神社の茅の輪くぐりに使われる茅(かや)の輪は、直径約2メートルほど。そもそも神社は厳かな空気に包まれていますが、茅の輪をくぐるとさらに清々しい気持ちになるから不思議です。
夏越大祓ではもうひとつ「形代」という人の形をした紙に家族の名前を書いて、疫病祓いや厄祓いのお願いをします。
みなさんは神社にお詣りすると、背筋がピンとするような、心が洗われるような気持ちになりませんか。お宮参りや七五三、厄祓いなど、人生の節目でお詣りする神社ですが、実は私たちのとても身近な存在です。毎朝、日がのぼり、私たちの暮らすまちやたくさんの自然などのいのちを照らし、夜になれば月や星が空に輝く。神社は、そんな当たり前のような、奇跡のような日々の幸せに感謝し、またそれを神さまに願う場所でもあるのです。
人生の節目はもちろん、季節ごとに訪れてその景色に神さまの恵みを感じたり、何かうれしいことや悲しいことがあった時に、神さまを通して自分自身と対話するのもいいでしょう。願いは誓い。夏越大祓を終えて鳥居をくぐると、澄み切った心で明日からもまた日々を過ごしていけそうですね。
【須賀神社】福岡県朝倉市甘木873-5
【夏越祭】2024年7月31日(水)
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