2024.09.06
旧暦の8月15日の十五夜にお月見をする「中秋の名月」。2024年は9月17日の夜に当たります。旧暦で秋とされる期間のちょうど真ん中の日に当たる8月15日を「中秋」と言い、空が澄むこの時期の月が特別美しく見られることから、そう呼ばれるようになったそうです。夜がだんだん長くなり始めるこの時期、さまざまな思いを胸に夜空を見上げる楽しさを、朝倉の月にまつわる伝説とともにご紹介します。
中秋の名月と言えば、すすきを飾り月見団子をいただきながら観賞するのが定番。日本でこの風習が始まったのは江戸時代のことです。
9世紀ごろの中国で行われていたお月見が日本に伝わり、貴族の間で楽しむようになったとされるのが平安時代。そして江戸時代に庶民の間にその風習が広まったとされています。平安貴族が宴を楽しんだのに対し、江戸の庶民は十五夜のお月見を芋などの作物の収穫祭として祝っていたようです。そのため、中秋の名月は「芋名月」とも言われます。
ところで皆さんは月の模様と言えば何を思い浮かべますか?古い童謡にあるように、日本人は月の模様に「うさぎ」を見る方が多いのではないでしょうか。実は、月の模様に見るものは国や地域によって違うのです。
例えば日本では月の模様は、杵と臼で「お餅をつくうさぎ」ですが、南アメリカではうさぎの耳の部分が「ワニ」の口に、南ヨーロッパでは同じ部分が「カニ」のハサミに見えるそう。他にも「本を読むおばあさん」や「ロバ」「ライオン」など多種多様。古くから世界中の人々が月を見上げて語り合っていた様子が目に浮かびますね。
世界の国・地域の「月の模様」(一般的なもの)
・日本…お餅をつくうさぎ
・南アメリカ…ワニ、ロバなど
・南ヨーロッパ…大きなハサミを振り上げたカニ
・北ヨーロッパ…本を読むおばあさん
・アラビア…ライオン
それでは次にお月見の楽しみ方をご紹介しましょう。昔ながらのお月見と言えば縁側にススキを飾り、月見団子や芋をお供えして月を観賞するというもの。最近は縁側のない家も多いので、ベランダやお庭に屋外用のベンチやテーブルを出して楽しむのも良いでしょう。
中秋の名月は別目「芋名月」。芋以外にも栗や豆など旬のものをお供えして、畑のめぐみに感謝するのもお忘れなく。
さて、ここ朝倉にも月にまつわる伝説を持つ名所があります。恵蘇八幡宮の向かい、筑後川沿いにある水神社の「月見石」です。朝倉で崩御された斉明天皇の皇子である中大兄皇子が、この場所で名月を観賞し亡き母上を偲んだという伝説が残っています。月見石から目下の筑後川を眺めると、ざぁざぁと豊かに流れる水の音。絶え間ない水の流れと清らかに光る月が織りなす「静と動」の景に、中大兄皇子の御心は癒されたのでしょうか。
月見石のある水神社と言えば、三連水車のある堀川に水を通す水門がある場所。朝倉を潤いで満たす山田堰のこの神社では、毎年6月に通水式が行われます。
(2024年9月撮影)
今年の仲秋の名月は9月17日。38.5度と日本で一番暑い日を記録したこの日の夜、月見石の様子を見に行きました。中大兄皇子が月を愛でたであろう場所(月見石)から筑後川を望むと、空に美しい月を鮮明に見ることができました。
今、皆さんの心はどのような状態ですか。喜びや怒り、悲しみに楽しみ…さまざまな心の模様があるでしょう。そんな時、頭上の月は人にきっと何かを語りかけてくれます。世界中、たくさんの歌や絵画、伝説・物語にあるように、古くから人はさまざまな想いを胸に月を見上げてきました。月の光に心を穏やかに鎮める、中秋の名月が美しい習慣のためのきっかけのひとつになるといいですね。
恵蘇八幡宮ホームページ「斉明天皇御殯葬の地」
撮影協力:H&M.Otake
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