2025.01.27
生活インフラとしてまちに欠かせない建築・構造物。地域に溶け込みながら暮らしの中に息づいていたり、コミュニティの象徴として人が集う場になったり。まちの建造物が親しまれながら機能している様子を見ていると、それらの建築物や構造物が、まるで命を持った生き物のように感じられる。「工場萌え」「推しダム」など細分化された建造物マニアが増えた昨今、朝倉のまちにかくれた建造物を訪ね、そぞろ歩くのが【あさくら建造物さんぽ】。
今回取り上げるのはいずれも江戸時代に建てられた居住建築。住宅は、言うまでもなく人の暮らしの舞台である。当時を生きた人たちの日々の営みに思いを馳せながら、3邸の居住建築を訪ねてみよう。
写真:朝倉市教育委員会提供
まずは福岡県の有形文化財に指定されている秋月の石田家住宅。秋月の御用商人・甘木屋遠藤家の持ち家。記録によると、1762年に発生した宝暦の大火後すぐに西棟が再建、1799年に東棟が幕末に改修を受けたという。
「みせ」「なかのま」「ざしき」が一列に並ぶ町屋が並び、一棟に併合したり二棟に分割するなど、居住空間をスマートに利用できるのが特徴だ。
石田家住宅
【場所】朝倉市秋月
※観覧は外観のみ可能。個人宅のため見学の際はご配慮をお願いいたします。
写真:朝倉市教育委員会提供
旧石井家住宅は、日本の民家形式のひとつ・くど造りの古民家。くど造りとは、屋根の大棟が「コ」の字になっているもので、九州の有明海周辺、中でも福岡から佐賀へと続く筑後平野に多く見られる。
建てられたのは江戸時代。玄関から左に土間と馬屋、右側前面には12畳の部屋、その後ろに台所がある間取り。見学は外観のみ可能だが、外観だけでも300年以上前の人々の暮らしが十分に伝わる貴重な文化財だ。
旧石井家住宅
【場所】朝倉市宮野
※観覧は外観のみ可能
写真:朝倉市教育委員会提供
藩成立400年を迎え、昨年から記念行事も多く開かれている秋月。朝倉市指定有形文化財の旧田代家住宅は、秋月藩の上級武士の邸宅で、秋月の城下町の中でも最も規模が大きな武家屋敷のひとつ。
屋敷地を構成するすべての要素(主屋、土蔵、門、土塀、庭園)が残るため見どころも多く、不定期で屋内が一般公開されている。
旧田代家住宅
【場所】朝倉市秋月180-1
【開園時間】9:00〜16:00
※年末年始は休園、悪天候時には休園の場合あり
【入園料】無料
※一般公開イベント時をのぞき、座敷などの住宅内部へは立ち入りができません。
今回は朝倉に残る居住建築物を紹介した。石田家住宅は商家、旧石井家住宅は一般民家、旧田代家住宅は武家屋敷と三者三様の趣があり、どれも興味深い文化財だが、それぞれの建物を使う人の階級や生業が機能に反映されているところこそ、居住建築物の見どころと言えよう。
福岡県立図書館所蔵の「秋月城下絵図」を見ると、秋月藩初代の黒田長興が行なった城下町の町割りにより、秋月城周辺には上級家臣の屋敷、盆地の周辺には社寺、出入り口には町屋が配置されているのがわかる。当時を生きた人々の生業や暮らしに想いを馳せ、古地図を片手に歩くのもおすすめだ。
【参考サイト】
・朝倉市 有形文化財を見たい「建造物」
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