2025.01.10
明けましておめでとうございます。大型の寒気とともにはじまった2025年。皆さまはお正月をどうお過ごしですか。お正月はおめでたいハレの日。おせち料理やお雑煮を家族みんなで囲み、1年の無病息災や子孫繁栄などを願います。朝倉の郷土食「筑前朝倉蒸し雑煮」をつくって食べたという方もいらっしゃることでしょう。おめでたい席に欠かせないものと言えばおいしいお酒。今回は、お正月にいただくお屠蘇についてご紹介します。
お正月には世界中でお祝いのお酒が飲まれます。日本のようにお料理やお酒の食材ひとつひとつに願いが込められているものは少なく、新年パーティーのお酒らしいシャンパンのような華やかなお酒が多いようです。
お屠蘇は「屠蘇散」呼ばれる5〜10種類の生薬を日本酒やみりんに漬け込んだ薬草酒。桔梗や肉桂、山椒や陳腐など、冬の体にうれしい生薬が配合されています。あの独特の香りの正体は、複数の生薬が配合された屠蘇散の香りなのです。
歌川国芳『通俗三国志之内 華陀骨刮関羽箭療治図』©The Trustees of the British Museum.
お屠蘇が生まれたのは、『三国志』で知られる三国時代の中国。薬学や鍼灸に天才的な才能を持っていた華佗(かだ)という伝説の医師が考案したものと言われています。1年の災厄除けに数十種の生薬を調合し、それを酒に浸して飲んだのが始まりだそう。日本に伝わったのは平安時代(中国では唐)で、平安貴族の間でお正月に飲まれるようになり、江戸時代に一般の人々の間でも飲まれるようになりました。
屠蘇散という名前の由来は、邪気をほふ(屠)り生気を「蘇」生させるという説も。由来を見るに、無病長寿を願って飲む現在のお屠蘇とあまり変わりがないので、中国で生まれた時からずっとお正月の行事食のひとつとして受け継がれてきたのでしょう。
お屠蘇は、今から約1800年前の三国時代に中国で生まれたことがわかりましたが、実はいただく際のお作法があることをご存知でしたか。とはいえ、あまり身構えなくてもOK。お作法や注意を見て、できそうなものからトライしていくのも良いでしょう。家族みんなで全員の無病長寿を願うのが一番大切です。
【お屠蘇のいただき方】
①元日の朝、手を清めて神棚とお仏壇に手を合わせる。
②家族が揃ってから新年のあいさつをしてお屠蘇をいただく。
※お屠蘇はおせちやお雑煮をいただく前に飲む。
【いただく際の注意】
①お屠蘇を飲む時は全員が東の方角を向く。
②年少者から年長者の順番で飲む。
※ただし、厄年の方は厄除けのため最後に飲む。
③「ひとりこれ飲めば 一家苦しみなく、一家これ飲めば 一里病なし」と唱えて飲む。
年中行事は、地域の気候や風土、食文化や風習によって多少の違いがあるもの。お屠蘇ではいかがでしょうか。まず九州では、地酒に漬け込むところが多いようです。熊本は赤酒、鹿児島は黒酒に屠蘇散を浸して飲むとも言われます。また、甘めの味が好まれる関西は日本酒にみりんを混ぜて使うそう。ところが、屠蘇散に浸したお酒は西日本が中心。関東および北の方では、日本酒をそのままお屠蘇としていただくことが多いのだとか。お正月に神棚に上げる金箔入りの御神酒などは、見た目も華やかでお正月らしいですね。
各地のお雑煮はよく話題に上がりますが、地域により異なる「自分のまちのお屠蘇」に着目するのもおもしろいかもしれません。あなたのまちのお屠蘇はどんな飲み物ですか?
いかがでしたか?記事の内容についてのご感想や、ご自身の視点をSNSでシェアしましょう。HAMONISTの記事は、あなたの人生に寄せる波紋の源。朝倉から生まれた波紋を受け、あなたの心が感じた何かが、他の誰かの毎日を彩る新しい波紋として生まれ続けることを願っています。